オペラを観に

ザールラント州立劇場に行きました。先シーズンにプレミエを迎えたグノーの「ファウスト」です。個人的にオペラを観るときは、座席を変えて複数回観たいと思っています。すると1回目では気がつかなかったことが分かったり、演出で理解できなかったところが見えてくることがあります。今日がまさしくそのようなものでした。午後7時過ぎ。劇場に向かっています。

開演前の劇場の前。オペラは今日が再演初日です。

終演後。午後11時頃ですが、土曜日だからか人が多いです。

今日の公演は聴けて良かった公演でした。オーケストラの演奏が前半はきっちりかっちりで硬さの残る印象でしたが、後半最後は音自ら意思を持っているかのように自由に泳いでいるといった印象でした。あくまで個人的な印象ですが、大袈裟ではなく、ここ最近のオペラの演奏では最も良かったかもしれません。これで演出が分かりやすく、綺麗ならば、毎回完売、ほぼ完売になるような演目になった可能性もあります。演出に関して今回も先シーズンと同じような印象を受けました。先シーズンの投稿はこちら

時間経過に関してその都度、幕が降りてテキストで表示されています。休憩までの舞台は舞台転換も光の演出もなく、ただ設定上の時間が進んでいるだけです。舞台上のスクリーンではチャットのような会話が表示されていますが、遠くて読めません。衣装に関しても現代風なのか、若干古典になっているのか最初は分かりませんでした。そして舞台上の音、例えば部屋を荒らすような場面でも、音楽以上に音が大きく、音楽を邪魔しているような舞台になっています。特にオペラ前半は、舞台上の劇は設定上だけ時間が進み、見た目的には何も進んでおらず、しかし音楽は先に進んでいくので、舞台全体に動きのなく飽きが感じられる印象です。前半が終わった休憩時に帰った人もいました。

後半はやはり意味が分からない場面が幾つかありました。後半の前半までは、舞台上の劇と音楽がオペラ作品としてはあっておらず、音楽が舞台上の劇を盛り上げる風でもありませんでした。言ってみれば音楽は偶然そこに流れていたBGMで、舞台上だけで何か劇をやっている印象です。しかし最後は音楽が舞台上に出てきて、それに合わせて歌も良くなってきたといった印象でした。最後のカーテンコールでは合唱や一部の歌手、オーケストラにブラヴォーが飛んでいましたが、何か盛り上がりに欠ける再演初日でした。演奏が非常に素晴らしかっただけに、演出の分かりやすさ、綺麗さなどがあれば、もっと客が入り、また何度も観てみたい舞台になった可能性があります。劇場から見てみれば、今日の再演初日だけでなく、後日の公演もせめて観客が半分入ってくれればといった感じでしょうか。音楽が綺麗で演奏も良いだけに勿体無いと感じた夜でした。

一般的にオペラ、特に演出は個人的な好みが分かれる箇所だと思いますが、今日は不満を感じながらも新たな発見があったので、可能ならば再度観てみたいと思っています。不満がありながらも観たくなるところ、そこにオペラの深さがあるのかもしれません。