トリアーへ行く その3

「トリアーへ行く」

「トリアーへ行く その2」 の続きです。
ポルタ・ニグラ以外にも幾つかローマ時代の遺跡があります。
カイザーテルメン

トリアー

かつての大浴場。当時は大勢の人が集まる場所だったと思います。
現在は廃墟となっており、ここに人がいたことを想像するのは
難しくなっていますが、その「人がいた」という感覚がその建造物を
より魅力的に見せている気がします。

トリアー

この天井の高い通路は現在地下に当たる場所なので、
もしかすると当時は水面の下だったのかもしれません。

トリアー

円形劇場

トリアー

ここは非常に驚くべき場所でした。
というのは客席部分ではそれほどではないのですが、
一番下の舞台のところに降りると音が何重にも響きました。
試しに一度手を打つとそれが4回ほど響きます。
声も同じくです。地下にも降りられますが
そこは空洞になっており水たまりがあります。
そういったことが影響しているのか分かりませんが
音が幾重にも重なって聞こえます。

トリアー

ローマ時代、ここは舞台や闘技会場だったのでしょう。
舞台ではその独特の音響が人々を鼓舞させたのかもしれません。
多くの観客に囲まれ、舞台に立つ。
言葉では簡単に表現できないような世界が
存在していたかもしれません。
そこにある案内板によると約20000人収容ということです。
この場所にそれだけ多くの人がいて、熱狂していたとは
現在の雰囲気からはあまり考えられませんが、
ローマ時代のその場所が今目の前にあるというのが
不思議な気分です。

トリアー

私たちが生きている現在という時間、
一秒一秒が既に過去になっていきます。
進んでいる時間を中心に考えると
一分前、一時間前も既に過去ですが、
逆に大きな見方をすれば、一分前も一時間前も
まだ「現在」の一部と言えるかもしれません。
ローマ時代の建物だけでなく、
そこにいた人々にも思いを馳せると
それが単なる遠くの過去のものではなく、
その大きな「現在」の一部にも感じられ、
その建造物や彼らがいた空間が
私たちのいる時間と繋がっているようにも
感じられます。
その感覚を持って建造物に手を触れてみると
冷たいものの中に何世代にもわたって受け継がれてきた
歴史のようなものや、様々な人の感情まで
浮かんできそうで、
彼らがいた世界がより身近な存在になるような気がします。
彼らの時代、私たちの時代が一つの大きな「現在」だと意識すると
未来さえもその「現在」のなかにあるように感じられ、
少し不思議な感じがします。