人目に付かない

非常に急な階段です。
それほど高くはないですが、上に登ってから振り返ると
そのまま転げ落ちそうな感覚を覚えました。

日吉東照宮

「急な階段ですね」
それが上の受付での挨拶になりました。
聞けば、建造時に下から見えないように、人目に付かないように作れという
命があったと言うことです。
正面から見れば鳥居の奥の階段は暗くてはっきり見えず
上に何があるかは分かりません。
鳥居の前の緩やかな階段は、おそらくそれほど古くない時期に
作られたものかも知れません。
昔は木々の間にある細い一本道があるだけだと思うと
神社が木々に囲まれて、言い換えれば守られていたということでしょうか。

日吉東照宮

階段の上、そこにはまだ雪が残っています。
市内では雪がほとんど見られないので、
ここはそれだけ気温が低いのかも知れません。
奥にひっそりとした門があります。

日吉東照宮

更にその奥には建物があります。
拝殿と本殿が一体となっている権現造りです。
その建物は山の木々に守られて、音もなく静かに佇んでおり、
曇り空が似合っている場所に感じられました。

日吉東照宮

よく見てみれば装飾も立体的に作られているなど
手の込んだものがみられます。
ただ傷が付いていたり剥がれていたりするのを目にすると
少し残念な気もしますが、しかしそれがかえって
この場所の落ち着いた雰囲気を作り上げているような気もします。

日吉東照宮

中に入ると金色の装飾が目を惹きます。
そして壁などに描かれた人物画を目にすると
まるで奉られている神が孤独を避けるために
人を置いたようにも感じられました。
それがこの人目に付かない場所の
ひっそりとした孤独感をなお強めている気がしました。

日吉東照宮